関連記事

「人間不信になりました」早期退職した44歳男性の後悔。一緒に会社を作るはずが…上司が“まさかの裏切り”-日刊SPA!

2024/07/07

◇◇◇絆ワークプロジェクトでは、社員の引き抜きやデータ不正持ち出しなど、企業の不正に関する事例について取り上げ、皆様へ情報共有を行っております。

「人間不信になりました」早期退職した44歳男性の後悔。一緒に会社を作るはずが…上司が“まさかの裏切り”

この事例の3つのポイント

①先輩上司の引き抜きで早期退職を決断

②まさかの裏切りで引き抜き話は無かったことに

③人生が激変して職探しの日々に

最近よく目にする企業の早期退職者募集のニュース。業績悪化に伴うものもあれば、先を見据えた前向きな取り組みなどさまざまです。ただ、いずれにせよ、終身雇用が当たり前の世代にとっては、あまり喜ばしい制度ではありません。今回は、早期退職にまつわるある男性のエピソードを日刊SPA!が伝えています。

 工業機械メーカーに勤めて20年の白石さん(仮名・44歳)。若い頃は営業一筋で、それなりの評価を受けてきたものの、30代後半から営業成績が頭打ちになり、取引先のサポートを行う部署に異動したそうです。

「私には取りえがあまりありませんが、あえて言うなら”まじめ”なところですかね。営業職はコツコツとできる仕事だったので好きでしたが、異動に対しては異議はありませんでした。私の力不足ですから」

 やり甲斐は半減したものの、不平・不満は言わずに頑張っていた白石さん。そんな中、勤続20年以上の従業員を対象にした「早期退職の募集」が発表されたそうです。

「とうとう来たか、という感じでした。営業職を離れてしばらくしたころ、親会社が部品の調達先をベトナムに変更したこともあり、業績も下降気味だったと聞いています。会社としては背に腹は代えられない決断だったのでしょうね」

 今回の「早期退職者募集制度」では、退職金の増額に加え、再就職のあっせんまであるとのことでしたが、白石さんはあまり興味を持てなかったといいます。

「少しだけ心が揺らぎましたが、今さら新天地に出向いてそこでイチから頑張る勇気と体力には自信はありませんね。私は、このまま会社にしがみつくつもりでした」

 そんな矢先、入社以来信頼している先輩上司のMさんから思わぬ誘いを受けます。それは、今までの人脈を元にして、新しい工業部品の製造会社を設立するとのことでした。

「Mさんは、会社の中でも主要なメンバーであり、日本だけでなく世界各国に多くの人脈があったため、何の違和感もなくすぐに興味が湧きました」

 会社にしがみつくつもりだった白石さんは、その姿勢を180度変え、Mさんと話し合いの場を設けた際、「白石くんには、責任あるポストに着いてもらうつもりだ。是非一緒にやろう」と言われ、早期退職を決断しました。

「『ぜひとも一緒にやろう』というフレーズが私に響きました。今まで、頼りにされたり評価されたりすることがなかったので、とても新鮮でした。その夜、妻や家族に経緯を話し、私の新たな挑戦に対して理解を得ることができました」

 早期退職の締切日まで1週間ほどありましたが、迷わず退職への意思を表示し、所定の手続きを進めたそうです。

「Mさんとは、その後も何度か新ビジネスについてディスカッションを行い、大まかな計画は把握できていました。本格的な事業開始は半年ほど先なので、これまで苦労をかけてきた家族と一緒に国内旅行を計画しました」

 残務処理を行いながら、ついに古巣の会社を巣立つ日が迫ってきたころ、一通のLINEメッセージが届いたといいます。

「送信主はMさんでした。『とにかく新会社設立の準備でバタバタしているので、しばらく連絡が途絶えるかもしれないが、安心してください』という内容でした。何の疑問も、違和感も抱かず、私は計画していた家族旅行に出かけました」

 ところが、それから1カ月たっても、2カ月たっても、Mさんからは一向に連絡が入りませんでした。さすがに不安になった白石さんは、Mさんの自宅に電話したり、メールやメッセージなど、あらゆるSNSを利用して連絡を試みました。

 すると、3日ほどたったある日、1通のメッセージが届きました。

「新会社設立のために動いていたが、海外のコーディネーターにお金をだまされた。そのために、緊急で動き回っていたので連絡もできなかった。新会社の設立計画は頓挫した。本当に申し訳ない。私を探さないでほしい」

 晴天のへきれきとはまさにこのことで、白石さんは一瞬頭が真っ白になったといいます。

「信じてしまった自分にも責任はあると思っています。40歳半ばにして人にだまされるなんて、想像もしていませんでした。私には養う家族もいるので、落ち込んでいる暇もありません。明日から仕事探しです。でも、そもそもMさんの話は本当だったのかとも思っています。もしかしたら、私を退職させるための作戦だったのかも……。そんな疑念さえ持ちます。とにかく、仕事はまた頑張ればよいことなのですが、心のショックが大きすぎて、立ち直りに時間がかかりそうです」